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思いがけない再会

思いがけない再会 開幕直前のある日、柔道会場の北京科学技術大学体育館に行った。取材拠点となる会場内の視察と、組み合わせ抽選を見るためだ。プレスルームや記者席、選手と報道陣との唯一の接点であるミックスゾーンの確認、記者の導線もあらかた分かって一息ついていると、突然声を掛けられた。
 「日本の記者の方ですよね」。いぶかしげに振り返ると、スタッフの制服を着た青年がニコニコ笑っている。「お久しぶりです」。日に焼けた顔がまぶしい。記憶が目まぐるしく駆け回る。確かにどこかで…。あっ、ドーハか。2年前のアジア大会でも同じようにスタッフとして動き回っていた姿を思い出した。
 J君は東京出身の24歳。高校を卒業後、オーストラリアに渡って6年目。キャンベラの大学でスポーツマネジメントを専攻する学生だ。約1カ月半、北京五輪組織委員会のオリンピック・ニュース・サービス(ONS)の一員として五輪とかかわっている。
 ONSは活躍した選手らの談話をいち早くまとめてリリースする。記者が五輪に出場するすべての選手の談話を取ることは不可能だから、記者にとってはなくてはならない存在だ。ミックスゾーンでは記者とは違い、選手の側で取材している。
 「ママでも金」を狙った谷亮子選手が登場した初日のミックスゾーンは各国の報道陣でごった返した。迷路のように仕切られた通路を選手が通り、そこを記者が呼び止めて取材する。まず、テレビが取材を行い、その後、ペン記者の所に移動して来るのが通例だ。
 ところが、話題の中心選手とあって、テレビの取材がなかなか終わらない。予定された時間を大幅に超える。締め切りも迫り、ペン記者はいら立つ。中には声を荒らげて抗議する者もいる。結局は流れのまま、短い取材となってしまうのだが、ペン記者にとってはいつも釈然としない思いばかりが残ることとなる。
 数日後、J君が泣きついてきた。「聞いてください。みんな僕に文句を言うんですよ。僕の仕事は違うのに」と言う。ペン記者の抗議がJ君に殺到していたらしいのだ。こちらからは何も言えなかったが、少しくらいは彼の不満のはけ口にでもなればと受け止めてあげることにした。
 だが、J君はへこたれない。「つらいことはないです。すべては経験ですから」と明るい。将来はオーストラリアでスポーツのイベントマネジメントにかかわる仕事をするのが夢という。初めて訪れた北京の地での思い掛けない再会。J君の夢が大きく羽ばたくことを願った。(北京時事)
(配信:2008/8/20)



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