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記者ブログ

北京で朝食を

 北京を初めて訪れたのは1985年3月。南の桂林から約2日かけて蒸気機関車の引く列車で入った。
 学生時代最後の一人旅。作家の沢木耕太郎氏の作品集「路上の視野」にある旅の話にあこがれ、約1カ月の中国放浪。同氏の名著「深夜特急」はまだ書かれてなかった。宿泊施設、紙幣、列車の切符売り場などが外国人と中国人で別だったし、第一、ビザを取るのが大変な時代だった。
 なんで北京? 80年に大学生になったころ聴いたシンガー・ソングライター、佐藤隆さんのデビュー曲「北京で朝食を」の影響は大きかった。天安門広場、壁新聞、自転車、万里の長城、詰め襟(人民服)の人。こういったものを巧みにちりばめたエキゾチックな歌詞に当時、強く引かれた。そして、その時の滞在で、佐藤さんの歌詞通りの光景は毎日のように目の当たりにした。
 さて、今回五輪取材で久々の北京。壁新聞は姿を消し、自転車は道の真ん中をとっくに自動車に譲り渡している。「道一杯」の光景を見たのは、自転車ロードレース競技の取材の時だけだ。
 佐藤さんの歌は緩やかな時の流れの中で昔(?)の恋人を思う曲だが、いま北京では取材と原稿に追われ、朝、ファストフードでさえ食べるのもままならない。恋人を思うぐらいなら眠るよおれ、の日々。それでも、楽しくないか、と問われれば楽しい、と即答する。仕事とはいえ、異国を旅する感覚は自分の心にきちんと根付いているのだから。(北京時事)
(配信:2008/8/23)



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