時事通信社
記者ブログ

愛国心って何だろう

愛国心って何だろう 歴史的な五輪を迎えたのに、中国人は本当にうれしいのだろうか。8日の開会式、深夜になっても粒子の気配を感じるほどの、重くよどんだ空気の中で、頭がくらくらするほどの光線にあふれたショーを見ながら考えていた。
 チベット問題に揺れる中、世界各地で聖火リレーが妨害に遭い、長野でのリレーもスタート地点が変更された。聖火が走れば走るほど、中国にとってマイナスの宣伝になる。そんなリレーなら、やらない方がよかったのではないか。四川の大地震で世界の視点が移るまで、人権問題、大気汚染、交通渋滞、情報操作などがクローズアップされていた。
 愛国心とは何だろう。そう思って、28歳の中国人女性に会うことにした。彼女の名は慕容萱さん。聖火リレーの混乱のさなか、米CNNテレビが中国を不当に批判したり、恣意(しい)的にこき下ろしたりする内容を報じたとして、反旗を翻した。
 慕さんは中国中央テレビのウェブサイト上に「做人別太CNN(CNNのような人にならないで)」という自作の歌を投稿。これが大きな共感を呼び、時の人になった。五輪開催を楽しみにしていた中国の人々にとって、ほかならぬ五輪を契機に世界から批判されるという不条理は我慢できなかった。慕さんの歌は爆発的に国内に広がった。
 歌はCNNに「なぜ一生懸命に知恵を絞って、うそを真実にしようとするの?」と問い掛け、「あなたはCNNみたいな人にならないで」と訴えている。
 「国を愛しているんだね」と聞いてみた。「当たり前でしょ。誰だって自分の国は好き。それを外から悪く言われたらどんな気持ちがする? あなた、日本のこと好きでしょ?」と逆に問い詰められた。
 そんな直球勝負に少し戸惑って、日本は嫌いだと答えてみた。東京だって空気は汚いし、電車はいつも込んでいる。春の花粉はアレルギー体質には本当につらい・。思いつく不満を並べてみると、彼女はクスっと笑って「そうね。どの国にもいいところもあれば、悪いところもある。いい人もいれば、悪い人もいる」と認めた。
 中国人から見て、日本のいいところは?。彼女は「トイレがきれい! これは中国とは決定的に違う」と即答した。お礼に「僕は中華料理が大好き。日本でいろいろ問題になっているけど、娘はギョーザが地球上で最高の食べ物だって言っている。長く深い歴史があって…」と返した。
 歌までつくってCNNに対抗するなんて、すごいエネルギーだが、彼女は「でも、欧米メディアには中国に対する偏見がある。わたしたちの文化や制度を理解していない」と、また始めに戻ってしまった。
 ともあれ、五輪は始まった。慕さんは「64年の東京、88年のソウルがそうだったように、五輪をきっかけに国はものすごい速さで発展していく。中国もきっとそうなる。たくさんの人がここに来てくれれば、中国のいろいろなことを知ってもらえる」と期待している。北京五輪が成功すればいい。心から、そう思う。(了)

米CNNテレビへの抗議を込めた歌をつくった慕容萱さん=8月7日、北京市 内のレストランで【時事通信社】(配信:2008/8/10)



北京五輪名場面集