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外国人記者を拘束する理由

外国人記者を拘束 北京五輪開催に向けた中国社会の変化を取材するため、6月25日に北京に入って以降、中国公安当局に2度拘束された。
 1度目は、7月12日に大地震に見舞われた四川省都江堰市で、校舎倒壊によって子どもを亡くした親を取材していた時。2度目は、8月10日夜に新疆ウイグル自治区クチャ県で発生した連続爆発現場で地元住民から話を聞いていた際だ。
 どちらも強制的に施設に連れて行かれた。都江堰では感染症が流行する恐れがあり、「衛生上の問題」、クチャ県では「外国人記者の安全」がそれぞれ理由とされた。
 四川大地震の取材では多数の外国人記者が拘束された。新疆のテロ取材でもカシュガルで中日新聞東京本社カメラマンと日本テレビ記者が武装警察から激しく暴行を受けた。わたしたちのケースも五輪期間中ということもあり報道された。
 わたしは5年間以上も北京に滞在したので、政治的に敏感な取材には拘束が付きものだと思っている。暴力を受けたり、国外退去になったりしない限り、「それが中国だから仕方がない」とあきらめ、それに懲りずにまた現場に向かう。そういう姿勢を貫いてきた。
 クチャ県から北京に戻り、拘束の経緯について日本大使館幹部から話を聞かれた。「中国に取材している記者はそれが当たり前だと考えているが、日本国内はそういう感じではない」らしい。
 わたしとしては、自分の拘束より、どうして中国は記者を拘束し続けなければならないか、という方に関心がある。今回の新疆で発生した2件の取材妨害事件に共通するのは、カメラマンの撮影した写真が標的となったことだ。公安当局は爆発現場を写した写真がないか執拗(しつよう)に調べ、同僚のカメラマンは写真を消去された。それは地方の「暗部」が外部に流出しないよう隠ぺいするためである。
 いくら中央政府が五輪に向け、外国人記者の地方取材に関する規制を緩和しても、地方の警察まで行き届いていない。「五輪期間中に問題を出さない」という中央の絶対指示を貫徹するため、暴力や抑圧も辞さないのである。
 クチャ県から北京に戻る際、経由地の新疆ウイグル自治区のウルムチ空港で携帯電話が鳴った。河南省のエイズ患者からだった。同じく感染者である妻が公安当局に拘束されたから「何とか助けてほしい」という連絡だった。
 彼女も輸血で感染し、政府に賠償を求めて直訴していた。地元公安当局は彼女が北京に陳情に行き、問題が大きくなるのを恐れて拘束したのだ。われわれ外国人記者を拘束し、写真を消去するのと同じ発想だ。
 五輪という国民を団結させる「求心力」がなくなった中国はどうなるか、注目し続けていきたい。(北京時事)
写真説明 中国新疆ウイグル自治区クチャ県で「社会安定維持」を訴えるスローガン【時事通信社】(配信:2008/8/15)



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