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レスリング

ポーカーフェース、熱く燃える=28歳松永が勲章−レスリング〔五輪・ハイライト〕

 静岡・焼津市の常照寺の次男坊。表情を変えない仏様を身近に見て育ったせいか、松永共広(綜合警備保障)はポーカーフェースだ。どんな時も淡々とした口調。そんな松永が初めての五輪の舞台で熱く燃えた。「レスリング人生22年目の集大成」として、すべてをぶつけた。
 照準はマンスロフ(ウズベキスタン)だった。2003年、05年の世界選手権覇者で55キロ級では最強選手として、マークしていた。
 5位に終わった05年世界選手権で敗れ、昨年の同選手権でも1回戦で苦杯をなめた。対戦成績は3戦3敗。「中学のころから世界チャンピオンになりたいという気持ちがあった」という松永にとって、目の上のたんこぶだった。
 だから、彼を目標にした。押しの強さに対抗するため、パワーアップに努め、組み手のクセを分析した。必死にタックルを磨き、守りを磨いた。昨年の同選手権で「差は縮まった」手応えはある。両ひざに不安を抱えながら、目標に向かって突き進んだ。
 小学生のころから抜群の才能を持ちながら、もう一つ伸び悩んだ。アテネ五輪では国内予選で敗れている。マンスロフを倒すことが、殻を破ることにつながる。そう信じてきた。そしてこの日の3回戦。目を見開き、全神経を研ぎ澄ませて戦った。難敵の攻めを堅い守りで封じ、速いタックルから得点を奪い、競り勝った。波に乗って、昨年の世界選手権王者も倒した。
 決勝では米国選手に敗れたが、銀メダルは28歳にとって勲章だ。何度も壁にぶつかりながら、あきらめずにやってきたことが報われた。7月の壮行会で、松永はちびっ子レスラーの前で緊張の面持ちで言葉を投げ掛けた。「みなさんも、悔いが残らないようにやってください」。ポーカーフェースの裏に、熱い血潮が流れている。(北京時事) (2008/08/19 19:13)

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